ワーキングメモリとは?「聞いて覚えて、済んだら消して」|遊びながら育てましょう

こんにちは。K3のさかもとくみです。
今日は「ワーキングメモリ」ということばについてのお話です。

お子さんがWISCやK式発達検査を受けて
「ワーキングメモリが弱いですね」
と言われたことがある方もいるかもしれません。そして説明を聞いてもピンとこないまま、
「それってどういうこと?」
「どうしたら伸ばせるの?」
と不安に感じているママやパパもいらっしゃると思います。


少し難しかったり,長くなるかもしれませんが,今日は私なりに「ワーキングメモリ」についてご説明したいと思います。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。

ワーキングメモリってなに?

たとえばママやパパご自身が,初めての料理をレシピアプリを見ながら作るときのことを想像してみてください。
スマホのレシピを見て、
「フライパンにごま油大さじ1、次に豚肉を入れて炒めて・・・」
といった具合に,手順をさっと頭に入れて実際の調理をしますね。

ワーキングメモリとは、例えると「脳の黒板」のようなものだとよく言われています。
何か目標とすることをやり遂げるために必要な情報ーー「聞いたこと」や「見たこと」を一時的に覚えておく,そんな記憶のシステムのことです。

この記憶のシステムを使って,私たちは目標を達成するために考えたり,判断したり,行動するわけです。
つまり,考えたり,理解したり,学習する(これを認知活動と言います)際には,この記憶のシステム=ワーキングメモリはなくてはならない機能なんです。

ワーキングメモリでは,「一時的に覚えた情報は使い終わったら消して,また新たな情報が仕入れられて一時的に覚える」というサイクルが繰り返されています。
このような「使っては入れ替える」記憶のシステムが,私たちの日常の行動を支えているのです。

ワーキングメモリが弱いということは,このシステムのどこかに苦手さがあるということです。
たとえば,一度に覚えられる容量が少ないとか,古い情報と新しい情報がごちゃ混ぜになるーそんな状態を指します。

けれども日々の遊びの中のちょっとした工夫を通じて,ワーキングメモリの力を少しずつ楽しく育んでいくことができます。
もちろんだれにでも得意・不得意はあります。ワーキングメモリの力にも個人差はあります。


私は,これは「かけっこの速さ」に似ているなぁと思います。
トレーニングすれば足は速くなりますが,それでも相対的には速く走れる人とゆっくりな人がいます。
それでもトレーニングを重ねることでその子なりの成長がきっと見られると思います。
ひとりひとりの伸びしろを大切にしながら,ワーキングメモリの成長を楽しく促してあげてほしいなと思うのです。

WISC・K式で「ワーキングメモリが弱い」と言われたら

ワーキングメモリの力には、生まれ持った個性の幅があります。
いくつもの手順を同時に覚えてこなせる子もいれば、ひとつずつ順番に取り組む方がうまくいく子もいます。

ワーキングメモリが弱いとされる子は,情報を一度にたくさん抱え込むと混乱しやすく,結果として「聞いてなかった」「忘れた」「集中できない」ように見えることもあるかもしれません。
でもそれは「怠けている」わけでも「努力が足りない」わけでもありません。

走る速さに個性があるように、覚え方や処理の仕方にも個性があり,それぞれのスタイルがあるのです。

そして、遊びや生活の中でその子なりに少しずつ育てていくことができる力でもあります。

日常の中でワーキングメモリを育てる遊び・お手伝い

遊びやお手伝いの中で,楽しく自然にワーキングメモリの力が育ってくれるといいですね。
いくつかの例を紹介したいと思います。


・しりとり(応用編:リズムしりとり)
→前の人が言った言葉を聞いて覚えて,自分の言葉を考える。言葉の記憶と切り替えがポイントですね。
応用編では,みんなで「2回」などと手拍子の回数を決めて,その間に言葉を考えます。手拍子の数も数えなければなりませんし,短い時間に言葉を考えなければならず,難易度アップ!

・赤白旗あげゲーム
→「赤あげて」「白下げて」などの指示を聞きながら,持っている旗を動かす。
タイミングよく,どちらかの手の旗を動かすとか動かさないとかを判断します。

・だるまさんがころんだ
→「だるまさんがころんだ」と言い終わるタイミングを予測して,自分の動きを止める。
タイミングの調整と注意の持続が求められます。

・ボールパスゲーム
→「あんたがたどこさ」の「さ」で隣の人にボールを渡す。
歌の歌詞をよく聞きながら,リズムとタイミングを合わせる練習になります。

・お手伝い・買い物
スーパーで「りんごを2つと,柿を1つ取ってきて」など。
「言葉を聞いて」→「覚えて」→「とってくる(動く)」というプロセス全体がワーキングメモリの練習になります。

・クッキング
ホットケーキ作りなど。
「卵を一つ,ボウルに割ってかき混ぜる」「牛乳を150cc注ぐ」などの作り方の手順を1つずつ区切って覚え,「実際に調理する」というこのプロセスもワーキングメモリの練習になります。

・身辺の準備
例えば翌日の登園の用意。
「体操があるから,体操服と体操ズボン,赤白帽と汗拭きタオルを用意しようね」と言って必要なものを揃える。
これも見たり聞いたりして確認し,実際に揃えるという行動が,良い練習になります。

これらは「見て・聞いて」「覚えて」「動く」という要素が共通しています。
楽しみながら「脳の黒板」を使う練習になっています。

学習にもつながる「脳の黒板」

算数の文章題が苦手なとき,情報が多すぎて整理しきれない(=ワーキングメモリの容量オーバー)こともあります。
工作や製作の準備で,複数の指示をすべて覚えきれないこともあるでしょう。
国語の授業で先生の質問が長いとき,その質問の内容がつかみにくいことがあるかもしれません。

けれども,どうぞ慌てないでください。
遊びの中でワーキングメモリを育むことが、回り道のように見えるかもしれませんが,実は学習の土台作りになっているのです。
まだまだ集中力は短いと思いますから,最初は5分や10分取り組めれば十分です。
まずは短い時間の中で「できた!」と感じられるような遊びやお手伝いから始めてみましょうね。

まとめ

特別な教材がなくても,遊びの中で「脳の黒板」を使う体験を重ねることが,お子さんの思考や学習の力につながっていきます。
「自分で考えて行動する力」や「気持ちの切り替え」にも関係のあるワーキングメモリの力。


ママやパパが,検査の結果や数字だけを見て,不安になり過ぎることのありませんように。

日々の遊びの中で少しずつ「できたね〜」「覚えてたね〜」と喜び合ったり,上手くいかなくても「違うねえ」「間違えちゃった!」と笑い合ってまた取り組めるような,おおらかな気持ちでお子さんの育ちを見守っていきましょうね。

「うまく覚えられない」「集中が続かない」などの困りごとがあるときも,遊びながらその力を支えていけますように,取り組みのヒントや遊びのバリエーションについて、私たち心理士にもどうぞご相談ください。

お子さんとママやパパが楽しい時間を過ごせますように。
その時々でぴったりのご提案をさせていただけるよう,私たちも精いっぱい応援・支援していきたいと思っています。